2023.03.14

配属先に関して新入社員が抱く不安を表す言葉「配属ガチャ」がニュースやSNSで話題となった。ソーシャルゲームでアイテムを手に入れるために回す「ガチャ」になぞらえて、「何が出てくるかは回してみないとわからない」という様子を、「自分自身がどの部署に配属されるのか、入社してみないとわからない」という不安に重ねた言葉として、発生したとされている。入社後の配属先による不安は、いつの時代にもあったが、近年のSNSにより、このような不安が可視化されやすくなったことも、このような言葉が話題となった端緒の一つであろう。


配属ガチャに関する新入社員の不安

SNS上では、配属ガチャに不安や悩みに共感する同世代もあれば、一方で配属ガチャを前向きにとらえる声もみられる。「配属はガチャで将来が決まるものではない」、「戦力としてまだ未熟で十分でない新入社員が配属に関して主張するべきではない」といった趣旨の意見も見られた。こうした意見があること自体は理解できるものの、それによって新入社員が抱いている不安感が解消されるわけではない。そうした不安に対して、入れる企業がどのように対処すれば良いのかを探るとともに、学生が配属ガチャに不安を覚える背景を、学生の志向の変化や社会勢の変化などをふまえて改めて整理してみよう。

配属ガチャではない

まず前提としたいのは、配属決定はガチャではないということ。企業の人員配置・配属決定は、ゲームのガチャのように決して運任せのものではなく、その企業の経営戦略や人員計画などに基づく総合的な判断のもと、合理的に行われている。社会人経験のない新入社員にとっては、配属に至るまでの決定プロセスがブラックボックスのように感じ受け止め、その不透明さから不安を感じているものと思われる。
こうしたプロセスの不透明さに加えて、新入社員たちが配属先決定に不安が生まれる原因として、さらに2つの背景が考えられる。それは、「内定出しから入社までの空白期間」、そして「勤務地・職種に関して自分で決めたいと学生が考えている」という点だ。

内定から入社までの空白期間

内々定を受けてから入社までの間に発生する空白期間は、採用のスケジュールによるものである。多くの会社が4月に内々定出しを行うが、4月から起算すると、内定式が行われる10月まで約半年、翌年4月の入社式至るまでに約1年という期間を要する。入社することは決めたが、その会社で何をするか具体的にはまだ分かっていない。そんな状況の中で、学生たちが入社後に対しての不安を抱くのは想像に難くない。

実際に配属先を「入社前」に知りたいと考えている学生は8割以上にも上がる。入社前に配属を告知する企業は6割前後あるが、「入社式を経ての配属を告知する企業は3割を超えており、学生とのギャップがみられる。人員配置・配属決定は企業として重要な判断となるため、学生が入社するまでの間に決定・告知することが難しいという事情もあるだろう。こうした学生の知りたい時期に配属先を教えてもらえないという状況は、学生の不安を増大させる要因の一つになっている。

内定を得ている学生に対して、内定後のフォロー面談でもっとも多いのは「具体的な業務内容」である。勤務地や職種に関しても、自分で判断して決めたいか、会社に適性を判断し決めてもらいたいかという質問では「勤務地・職種ともに自分で適性を判断して選びたい」がもっとも多い。

このように、多くの学生にとって、勤務地や職種といった入社後の配属先について具体的に知りたいという高い要望がわかる。配属ガチャへの不安は、こうした要望の「裏返し」であるとも言える。

勤務地・職種は自分で決めたい

勤務地や職種に対して、なるべく早く、なるべく具体的に知りたいと考える学生が多い中、こうした配属先への不安が解消されない場合、どのようなデメリットが生じるだろうか。
まず、配属先に関する情報が得られず、入社後の自身の具体的な業務内容や勤務地がわからないため、入社直後・あるいは入社後の姿や入社後数年経った後のキャリアなどについてイメージを持つことができず、その企業と自身のマッチング・適性について考えることが難しくなってしまう。そうした状態が入社後に対する不安や焦りにつながり、結果として内定辞退や、入社後の早期離職といったミスマッチにつながってしまうケースも想定できる。

しかし、配属はガチャではなく、企業全体を見据えた戦略のもとで判断される事項なので、学生の知りたいと思うタイミングでの決定・告知が難しい場合も十分にあり得る。このような状況において、配置ガチャによるデメリットを防ぐにはどのようにすればいいだろうか。

配属ガチャの前にできること

まず就活時に、配属に関する自身の希望を明確にすることが大切である。なぜ配属を希望するかということを、「深掘りする」ことで、「なんとなくこの部署・この勤務地は嫌だ」という漠然とした理由でなく、配属希望の理由を自分の頭の中で明確にし・言語化することにより、自身の志向や適性と配属について客観的に見つめ直すことができる。そのうえで、企業に対してその希望を伝え、配属決定時期を確認するなどのアクションに移り、企業側と配属に関するコミュニケーションを図ることが重要になる。

見切りをつけるか、経験豊富な企業に従うか

ここまで配属ガチャへの不安が生まれる背景・要因から、それによるデメリット、そしてそのデメリットを防ぐために学生側・企業側ができることを紹介してきた。ここまで書いてきて改めて感じたことは、配属決定・告知においては「学生が考える自身の適性と、企業が考える学生の適性のすり合わせ」という工程こそが非常に重要であり、そして、これこそが配属ガチャという言葉の裏に隠された、配属決定の本当の難しさであろう。就活生は自分自身で十分に納得のいく段階まで自己分析・業界・仕事研究などを進め、そのうえで就職活動を通じ、自身の適性についての考えを確かなものにしていく。一方で社会人未経験ということを自覚すれば、配属ガチャによって思いもかけなかった自分の可能性を発見でできるかもしれない。

対する企業は、これまで多くの社員を受け入れ、社会人として教育してきたという経験があり、企業側にしかわからない学生の適性とその配属先というものもあるだろう。そして時としてそれは学生自身の希望とは異なるかもしれない。そうした難しさがあることに変わりはないが、学生・企業の間で丁寧なコミュニケーションを重ね、学生が考える自身の適性と、企業が考える学生の適性の間にあるギャップを少しでも埋めていくことこそが、配属ガチャや配属先に関する問題を軽減・解消していくことにつながる方法ではないだろうか。

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