2017.05.17


「志望企業が人工知能(AI)を使った採用活動をしています。どう対策すればいいのでしょうか」。こんな相談が大学のキャリアセンターに舞い込む。

もしこの学生を採用したら、将来活躍できるか?インターネット広告大手は、エントリーシートの記載内容から、役員最終面接まで、AIによる診断を採否に使い始めた。担当者は「中核となるのが、機械学習を使った「成長予測モデル」と語る。

この会社では、2009年ごろから過去に在籍した約6000人の傾向値をまとめ、2014年度の採用から活用し今年度(2018年)の新卒採用では、AIが導き出したその人材の成長予測を、採否の判断材料の加えることにした。

選考プロセスはまずウェブサイトで簡単なアンケートに回答し、同社オリジナルの適性診検査を受け、グループワークを経て役員面接へと進む。「役員面接では、これまでの結果と印象を評価しするが、両方の結果はほとんどずれていなかった」と語る。配属もこの「成長予測モデル」と、チームとの相性をもとに、相性の合いそうな部門へあてはめていく。

指の動きや迷いで「ウソ」発見

航空大手もAIを使った採用に踏み切った。「通常のエントリーシートによる書類選考と同時に、面接に進む学生を選ぶ上での補完の位置づけとして学生のひととなり、人柄を理解するためのツールとして導入を決めた。「学生が自分で性格診断の結果をコントロールできなくなる初めてのケースになる」。多くの企業が使っている適性検査、SPIがあるが、AIによる適正検査との決定的な違いは、「ウソ発見機能」だ。

 

たとえばSPIでは、学生側が巧妙に回答の辻つじつまを合わせれば、『私は外交的』だ、といった模範的な結果を作り出すことも可能。しかし、AIによる適正検査は、「スマホを操作する指の動きや、迷っている時間なども含めAIが判断する。友人からの評価も加味するので、外交的と答えているが実は1人でいることが好きだ、といった潜在的な気質を見抜くことができる。

その性能を評価して18年卒からは本採用での活用を決めた。ほかにも、大手商社や大手ITベンチャーも導入を決めたという。

「自動足切りツール」ではないのか

まだ本格導入には至らないものの、大手商社も外部の専門機関と組んで、昨年夏ごろからAI採用システムの開発に入った。人事部採用のリーダは「人間が見ただけでは、どうしても主観が入るし、応募者が多くて見落としてしまう人材もあるだろう」。

「AI採用」に前向きな企業は、概して就活生に人気が高い。たくさんの応募に対し、採用担当の人数には限りがある。応募数が多い企業ほど、AIを使った効率的な採用に積極的なのはうなずける。

就活生のとらえ方は複雑

ただし「AIのアドバイスに従って志望企業を決めたり、自分の方向性を定めたり、頼りすぎるのも考えもの。5年、10年と年数を重ねるうちに、キャリアに対する考え方は変わっていく」という意見もある
一方で、「印象やイメージではなく、能力で採用してくれるなら公平でいいと思う」と、肯定的な意見もある。「自分でエントリーシートを書くと、いいことを書こうと『盛る』ことができてしまう。その点、AIは友達など他者による客観的な分析で評価されるので、より自分にあった企業を探しやすい」と冷静だ。

確かに、「なんとなく人当たりがいい」というような、人間の曖昧な目や、学歴フィルターなどより、「素の学生の頑張り」をAIで見抜けるようになるなら、学生にとって朗報だといえるだろう。「訓練されていない面接官のあいまいな判断よりはずっといい」

先行する大手インターネット人事担当は「いわゆる就活対策、面接のアピールは意味のないものになる」と語る。AIによって「就活対策」が不要になる未来を示唆した。

対策のできない就活――これは学生にとって朗報となるのか。

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